少  年  愛 u r a n i s m



イナガキ・タルホといえば、「少年愛」を欠くことはできません。A感覚の発見とその理論化は空前絶後の仕事です。それはエロティシズムの原点として、タルホ抽象世界のファンダメンタルズとなっています。

少年愛の形而上学

A感覚三角形

A感覚タルホ辞典

A感覚オブジェ群

本朝少年愛文学

謡曲

斯道用語

斯道の大家・研究者たち




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少年愛の形而上学

──人体とはAからOへと続く屈折望遠鏡であり感応コイルである。われわれはこれを感覚的鏡筒として、黄色地帯を突破して彼方に星の燦めく深淵を窺おうとしている。(『ギリシア的男性愛への憧れ』)



エロティシズムの領域を初めて方程式化した前人未踏の大業。タイトでありながら余裕とユーモアを併せ持ったエレガントな理論。


愛嬌
アイシス
アフロディト
臀見鬼人
いびつ
エロス
円筒
お尻
オナニー
開放
牡蠣の不足
括約筋パピルス論
逆エロス論
ギュー男爵
ギリシア人
原始エロス
サディズムとマゾヒズム
宗教とエロスの関係
少年愛
少年的ひめごと
スペクトルの縞目
多元主義(プールラリズム)
他内蔵
玉子生み
抽象化
超性的存在

ドンファン
ナルシス
覗き
花の優雅性
美少年と美女

ベドウィン族の小天幕
偏見
マルクスとフロイト
山伏
優雅(優美性、性的名誉)
遊戯
用事
緑陰嬢
Uranoia(永遠癖)



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A感覚三角形

──私における3Aは、aeroplane、astronomy、analerotism の三者である(『タルホ=コスモロジー』)



カドのあるものを好むタルホは、三角形づくりの天才。なぜ三角なのか?


三感覚(天体画の月世界、映画フィルム、飛行機のキャンバス。番外:自動車上の少年)
人生の三角形(人殺し:権力・軍人、泥棒:商人、隠亡:諸先生方、神の正四面体)
雪月花の三角形(能楽、茶の湯、弓矢の道、衆道の正四面体)
放蕩の三角形(少年愛、錬金術、黒ミサ)
A感覚三羽烏(華宵、彦造、勝一)
AVP三感覚
三色旗(AVP)
DCBキーストーン(白衣の三角:barber,cook,dentist)
MSE三角形(月、玉子、シャボンの異物三角)
SHOの三角(セックス、ホモセクシュアリティ、オナニー)
3A(航空術、アナルエロティーク、天文学)
Yellow Triangle(Tang,Egg-yellow,Honey)



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A感覚タルホ辞典

──先日、伊達が送ってくれたシュルレアリスム辞典に倣って、自分もひと つタルホ辞典を編もうかと考えた(『痔の記憶』)



作品『痔の記憶』の中に、みずから編纂したいとした空想のオブジェ辞典があります。その内容はいわゆるA感覚オブジェです。他項と重複しますが、その辞典に収録しようとしたオブジェのすべてを挙げてみました。これだけを『自選コンパクト版』として独立させてもよいかもしれません。


立体アルファベット(見出し)

お臀の写真(35葉)

かものはし
イソギンチャク
海うし
前肛動物
ゾウリ虫

「少年の友」一組の写真版
太さの順序で番号が付いた乳棒状のもの
変則の大小のひょうたん
同、松茸
紐で繋いだ数箇の木製着色玉子
スポイト
イルリガートル
カテーテル
ワセリン
紙シャボン
オリーヴ油
メンソレ

天体国:アストロランド(バチスカーフ的撮影による発光深海族)
深海烏賊
チョウチンアンコウ
ヒカリホヤ

チックタック氏撮影、薄板界
玉子を産む牡鶏倶楽部(時をつくって卵を生み落としている雄鶏を彫った銀の小函)
浣腸椅子の模型
フィールヒップ吹奏楽団の「痔淋部隊の行進」
シートレススラッカーズの砲兵陣地
月天子への供養(伝鳥羽僧正作)
桃星を旋る円筒形スプートニク
幼少年のエクスタシー
組曲『痔の記憶』(「痔淋部隊の行進」「幼少年エクスタシー」「蜂蜜だらけのパンティ ー」「玉子の通路」)

J=S=ステッドレルの色鉛筆(紫の芯と赤の芯)
アイザック=シンガーの裁縫機械(縫針)
ジョージ=イーストマンの小形写真機(エジソン標準型の35mmの切れはし)
ヘンリー=フォードの自動車(歯車一箇)
ウィリアム=リグレーのチューインガム(小鬼のマーク)

グラフ・ツェッペリン号の胴体表面の襞



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A感覚オブジェ群

──少年群がなんとなくうろん臭いのは、即ちビー玉、ラムネの玉、単3電池、どんぐりの実、葉巻のサック等々の予想がそこにあるからである。少年的ひめごとは、あらゆる「抽象的可能性」への出発点である。(『ミシンと蝙蝠傘』)



膨大なタルホ・オブジェ群の中から、とくに「A感覚オブジェ」を独立させてみました。模型が欲しいところ。


編上靴
アルツベルゲル式冷却器
椅子
イソギンチャク
インディアンの紐
ウキ
円筒
円筒族
お尻琴
お日様の肛門
オブジェ
かものはし
浣腸椅子
浣腸族
乾電池
沓の踵
靴の釦(ボタン)
毛の生えた星
腔腸旗
虚無僧と糊
コーモンヴァイオリン
サルマタ
3(B)
三字続き名詞と二字の動詞から成り立っている語
三色旗
自転車のサドル
シートレススラッカーズの砲兵陣地
痔の記憶
縞馬パンツ
少年的ひめごと
少年の玉手箱
尻剣
痔淋部隊の行進(フィールヒップ吹奏楽団)
人体神戸館
水兵服
角前髪
前立腺マッサージ器
玉子を生む雄鶏倶楽部(玉子生み)
担架
ちぢれ毛
直接検便(直検遊び)
『月天子への供養』→シートレススラッカーズの砲兵陣地
ツンドラ→直接検便→尻剣
天狗倶楽部
天狗サドル
桃星を旋る円筒形スプートニク
凸起つきゴムベルト
内部バグダッド
にぬき玉子
人形
人参
粘着セロファン(蟯虫セロファン)
ピリピリ紙
ヘーカル氏拡張器
ボーイスカウトの服
ポマード
みずら
耳隠し
無限ローソク
モリエール装置
『幼少年のエクスタシー』
裸体倶楽部
ワンダーワーカァ
AO工房
Craft-ebbingなもの
Saddle-man
Tの字の皺



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本朝少年愛文学

──醍醐三法院の『稚児之草子』にしても、肝腎の美少年は女性的豊満さに描かれている。少年はもっとほそやかなるものである筈だ。(『タルホ=コスモロジー』)



タルホが取り上げている古典のうち、絵巻や挿絵などを見てみたい。『稚児之草子』については、「『稚児之草子』私解」という作品もあり、それへの言及は数多いのですが、「絵」のほうは残念ながらいまだ見ることができません。『日本絵巻大成』(中央公論社)などにももちろん入っていません。白州正子氏は戦前に二度見たということですが、せめて、タルホが乱歩から見せてもらったという模写でも見たいもの。
タルホは室町期の稚児物語がとくに好みのようで、『秋夜長物語』『鳥部山物語』については、物語の全文を織り込んだ作品があります。これら稚児物語のみで『タルホ版室町稚児物語集』が成立しますし、さらに 『タルホ版日本古典少年愛文学集』を編むことも可能でしょう。
また系譜は異なりますが、『山ン本五郎左衛門只今退散仕る』と して少年愛物語に換骨奪胎したものに『稲生物怪録』があります。
                              


『秋夜長物語』
『あしびき』
『幻夢物語』
『嵯峨物語』
『稚児之草子』
『鳥部山物語』
『男色大鑑』
『松帆浦物語』
『弁の草子』
『稲生物怪録絵巻』



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謡曲

──取られて行きし山々を思ひやるこそ悲しけれ……<花月>(『取られて行きし山々を――花月幻想U』)



父親の影響のもとに、小学校に上がる頃から仕舞の稽古(観世流)を始めたタルホ。その期間は長くはありませんでしたが、謡曲の世界はほとんどタルホの血肉と化しているようです。それは能の「視覚世界」より、むしろ謡曲の「聴覚世界」に属するのですが、こうした日本古典世界に浸ってみたいもの。
「少年愛」の下に分類すべきかどうか検討の余地はありますが、『花月』に限らず『鞍馬天狗』『大江山』『菊慈童』『松風』など、タルホ好みの少年愛向きのものもあるので、ひとまずここへ。また、先の『タルホ版日本古典少年愛文学集』と同様に、『タルホ版謡曲集』も可能でしょう。
                              



花月
後張大口袴



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斯道用語

──あれには君、ネリギというものがあるが、僕の中学時代に紙シャボンというのを耳にしたことがある<澄江堂主人>(『澄江堂河童談義』)



『少年愛の美学』読解には、専門用語の知識も必要だという点で。
                              



カゲマ、カゲロウ
カハツルミ
かんじょうの賦
『後庭花』
紫稍花
スバリ、スバル
ネリギ



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斯道の大家・研究者たち

──クラフトエビングとか、エリスとかモルとかいう性科学者は決ったように遠方に篤実な協力者を持っている(『東京遁走曲』)



少年愛、A感覚の理論化を、文献的に支えたその道の先達たち。戦後の早い時期からの読者、木ノ内洋二氏などが参考文献をタルホに送ったということのようですが、出典の調査・解明はいまだなされていません。
南方熊楠との間に交わされた有名な書簡(『南方熊楠全集』収録)の一方の相手である岩田準一。彼の一代の労作『男色文献書志』編纂には、かの江戸川乱歩も力を貸しています。乱歩の紹介で岩田準一はタルホに会っており、その『書志』にはタルホの作品名もいくつか見えます。もちろん『少年愛の美学』関連の作品は、大いにこの『書志』の恩恵に与っているはず。


岩田準一
ウィッテルス
ウルリヒス(カール・ハインリヒ)
江戸川乱歩
エリス(ハヴェロック・)
カーペンター(エドワード・)
クラフトエビング
サド
ザロメ(ル・アンドレス・)
ジッド(アンドレ・)
シュテッケル(ステッケル)
ジュネ(ジャン・)
田岡嶺雲
デキンソン氏
ヒルシュフェルト
フェンレンツィ博士
プリニウス
ブレーク(ウィリアム・)
フロイト
マクルーゼ
南方熊楠
モル(アルベルト・)



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