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オブジェ&玩具
シップ
トレイン
オートモビル
タルホ鉱物誌
タルホ植物誌
ミュージック
■オブジェ&玩具
──そもそも抽象とは「存在」のユニークな可能性であって、この精神を失ったら一切はガラクタの集積になってしまう。(『タルホ的万国博感』)
さまざまな「モノ」たち。しかし、タルホの玩具は雑多なようでも、すべてが「抽象の糸」でつながっています。
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あいまいメガネ
赤松洋菓子部
赤松洋品雑貨店
鴉片丁幾(ロオドナム)
黄色新聞(イエローペーパー)
伊勢土産
ウキ
宇宙箱
王と王妃
『大阪パック』
オートジャイロ
オブジェ
オペラハット
音(オン)
カッケンブス空気銃
角のあるもの
硝子絵
感覚に対する意見
玩具
危険なる玩具
空気製乳母車
暗いおもちゃ
クラリネット
クリーム
限定を嫌う気持
ケンブリッジ帽
コンフェッチ
最初の存在学的形態
逆さU
サモワール
三角
シェラックの小壜
自転車のチェーン
ジャイロスコープ
食塩注射器
書生袋
ショッコウ(燭光)
真鍮の小環
真鍮の砲弾
セメン樽
ゼンマイ
タイムボール(最初のオブジェモビール)
只それだけの話
地球儀
ディアボロ
てっぺんに風車が付いた格子井戸
電話
童話
南京玉
ねずみ(ハンカチ芸)
バネ仕掛の蛾→ゼンマイ仕掛
パリの町
ビルタ(金属片組立玩具)
フェヴァリット
二重まわしとトンビ
みかんの袋に付いている白いすじ
模型
模型自然
モーゼル自動拳銃
最もきらいな一群←→Favorite
ヤ→最もきらいな一群
山吹
沃野
立体文字
リノリューム
ワットマン紙(水彩画用)
Q
TD(ブリキ帽と空壜)
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■シップ
──小学初年の二学期に明石へ移ると、大船小船にお馴染にならないわけに行かない。級友らは大抵、ナイフや切出しを手にして、木片や厚い松の皮を削って、おのおのの好む船体を作っていたからである。(『芦の都シリーズ』)
タルホの過ごした土地には、淀川、明石海峡、神戸港がありました。いずれも船と切り離せない環境です。ロゼッタ丸、笠戸丸をはじめとする、船に対する愛着も繰り返し語られています。
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イカリのマーク
煙突(汽船の)
おしっこ(船の)
笠戸丸
春洋丸
水平線
水兵服
スコロク(スクリュー)
大の字をぺちゃんこにした商船会社の旗じるし(千鳥丸、絵島丸、エンプレス・オブ・チ ャイナ)
天洋丸
帆船少年
ブイのダンディズム
へさきを水面から離して走る警察ボウト
ペリスコープ(潜望鏡)
(砲艦)淀の鉛筆画(舷側の赤錆)
砲弾落下の水柱
ホワイト・シップ
旅順海戦館
露西亜の軍艦が火災を起している油絵
ロゼッタ丸
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■トレイン
──巷の灯を反射したボギー電車がポールの先から緑色の火花を零して遠い街角を曲って行く(『わたしの耽美主義』)
タルホは、電車の火花に世紀末的であると同時に未来的な感覚を見いだす。
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汽車
コロンビアット(ジュール・ヴェルヌの挿絵)
デペロの機関車
ハドスンC2型(汽車)
プルマンカー
平面電車
ボギー電車
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■ オートモビル
──「自動車の正面にある蜜蜂の巣はしゃれている」
友だちは相槌を打ちました。
「あそこには夢が棲んでいるね」 (『放熱器』)
タルホにとって、エグゾーストの匂いとラジエーターは自動車のカナメ。しかし、18歳のとき上京して運転免許を取得するも、その後自動車を運転したという話は聞きません。
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エグゾーストの匂い
エナメル臭い自動車
オットー氏2衝程機関
自動車のハンドル
自動車の幌と飛行機の羽根の相関性
セダン(リムジーン、クーペ)
算盤自動車
第四次元自動車
二十世紀的憂愁
二十世紀の臭覚
二十世紀の発動機
屁こき車
蜜蜂の巣
夢の蛹→蜜蜂の巣
予備タイア
リムジーン
ロードスター
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■タルホ鉱物誌
──結晶した鉱物が一等偉い(『菟』)
特定の鉱物に対する偏愛でなく、無機界への郷愁としての鉱物。鉱物自体はそれほど繰り返し取り上げられるテーマではありませんが、『水晶物語』の一編があります。キーワードには挙がっていませんが、「タルホ鉱物誌」として、その作品に登場する鉱物ぐらいは確認しておきたいもの。
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アレキサンドライト
鉱物
第四紀層
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■ タルホ植物誌
──すみれ、すみれ、真白い固いカラーと、それから口では云えない、洒落た、可憐な或るものを想わせるすみれ。(『菫とヘルメット』)
「鉱物への過渡としての植物愛好」と語っていますが、同様に「植物誌」を編んでみたい。
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夾竹桃
石榴
サジッテール(おもだか)
菫
トネリコ
白楊
パームツリー(棕櫚)
パンジー(三色菫)
はんのき
まつばぼたん
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■ ミュージック
──ある晩 ルールブリタニヤを歌いながら帽子をほうり上げると 星にぶッつかっ た (『一千一秒物語』)
耳にする機会のなくなった曲も多い。聴いてみたくありませんか。
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『アルルの女』
『美しき天然』
『エジプチァンミッドナイトパレイド』
オーヴァーチュア
オブジェ楽譜
『オリエンタルダンス』
音楽
『グッドナイトレディス』
『グッドバイダブリンベイ』
クラリネット
『ケーニッヒカールマーチ』
コロンビアレコードの歎き
『讃美歌第三百五十七番』
『十月が宴会を開いた』
スコットランドの円舞曲
『スワニイリヴァ』
『さようならピカデリ』
『序曲・白衣の婦人(マダム・ブランシェ)』
『序曲・バグダッドの太守』
『太湖船』
『チペレリ』(It's A Long Way To Tipperary )
『どこへ?』(シューベルト)(テナー:レオ・スレザーク)
西村天囚博士作の琵琶歌
二十世紀の悲哀→『Two Step, Zaragoza』
『パシフィック231』(オネゲル)
『飛行機の曲』
『ファウスト序曲』
フォックストロット
『マデロン』(『マデロンマーチ』)
歌劇『マルタ』
モナディ
『ルールブリタニア』
『Chief of Bagdad』→『序曲・バグダッドの太守』
『Flying Dutchman』(ワーグナー歌劇)
『Lion chase』
『Over There』
『Two step, Zaragoza』
『Youngman's Fancy』
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『グッドナイトレディス』
──その他に、以前からあった歌だが、多理はグッドナイトレディスが好きであった。急速に物が転って行くようなリズムが、暗緑色の波のうねりを縫ってゆくモーターボートの姿を浮ばせるからであった。それは宴会が果てて大都会の河岸にある建物の裏梯子を下りて乗り込む船のように想像された。そして多理は、連続冒険活劇で観た『深夜の人』のように、ドレッスコウトを着て縞の仮面をつけた自分自身と、その仲間として、黒ずくめの婦人達と道化と、猫と、マーチ・ヘァレスとピータァ・パンとを描いた。(「古典物語)
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『グッドバイダブリンベイ』
私はしかし、カナダ帰りの女の音楽先生に教わった「チベレリ」や「マデロン」や「グッドバイダブリンベイ」など、第一次大戦初期の英国軍歌を口笛で吹いていた。それは海港神戸の少年には似つかわしいと思われるのであった。(「デカンショ節「流行歌」」)
歌詞の中に、“Goodbye! I'm on my way to dear old Dublin Bay”とあるので、この曲のことだと思われるが、一般的には“I'm onmy way to Dublin Bay”というタイトルで呼ばれているようである。
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『ケーニッヒカールマーチ』
例の管理人の息子の友人に、ケーニッヒカールマーチや、歌劇マルタの抜萃や、スコットランドの円舞曲を上手に口笛で吹く若者がいました。かれのかおは、いつも口先をとんがらせているせいか蛸のように見えましたが、からだは尾長猿の感じで、そればかりか、或る時シャツを着換えているのを見たら、背に赤いポツポツが一面に出来ていました。けれどもそんなことに似合わず、この男の口笛にはいつもうっとりさせられるのでした。自分にはなかなおぼえ込まれない或る半音下る箇所なんか、甘く、柔らかく、微妙であり、どうしてあんな巧みな節廻しと美しい音色が出るのかふしぎなくらいでした。(「赤い雄鶏」)
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『チペレリ』
そんな暑い一日の正午過ぎ、市電終点に号外の鈴が鳴って、サラエボに轟いた銃声が報じられていた。それからは欧羅巴では日に日に戦線が拡大して行った。多理には一日、音楽の先生からチペレリを紹介された時のことが忘れられない。全く三階のピアノも椅子もその瞬間踊り出すかと思われた。……然し一旦チペレリが唱われた時、此処には曲調と歌詞との一致があると感じないでは居られなかった。(「古典物語」)
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『どこへ?』
応接間でシューベルトの歌曲“どこへ?”を二人で聴きました。歌手はテナーのレオ・スレザークでした。(「菫色のANUS」)
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『序曲・白衣の婦人』
もう一つ別なおしゃれを紹介しなければならない。それは同じ年の未だ春のシーズン中のことであった。雲一つない日曜日の午後二時頃、旧城内に施工してつい先頃ひらかれたばかりの、明石公園の本丸趾には万国旗が微風にさゆらいで、大阪第四師団軍楽隊が奏する《序曲・白衣の婦人》が鳴り響いていた。金管楽団を取巻いて椅子席があり、そのうしろに群集が立っていたが、その中に、この春から自分の母校へ汽車通学を始めているこの町の某君をみとめた。(「緑の蔭)
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『序曲・バグダッドの太守』
ある寒い晩、活動写真の余興として、大阪第四師団軍楽隊が白幕の前で、序曲バクダートの酋長を聴かせてくれた。現今では「バグダッドの太守」と訂正されているが、あの時、自分は新規な「酋長」を迎えて、有頂天になった。それはまた「マーチではないもの」を楽隊から教えられた最初の機会でもあった。(「浪花シリーズ」)
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『マデロン』
私はしかし、カナダ帰りの女の音楽先生に教わった「チベレリ」や「マデロン」や「グッドバイダブリンベイ」など、第一次大戦初期の英国軍歌を口笛で吹いていた。それは海港神戸の少年には似つかわしいと思われるのであった。(「デカンショ節「流行歌」」)
「チベレリ」は“Tipperary”なので、「チペレリ」が正しい。
「マデロン」はフランスの歌である。
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歌劇『マルタ』
一体多理は声楽に好意を寄せていなかった。歌詞は何時だって旋律とは関係がないと考えられたから。或る節に合わしてどんな歌詞をうたってもよいのは、例えば伊太利の船唄の節廻しが日本の鳩ぽっぽの唱歌になっていることが証している。爺さん酒飲んで酔払って転んだは、歌劇マルタの一節でないか。たとい、メロディーと言葉の一致があったところで、物理的な且つ抽象的な楽音と、肉声による具体的な意味とのあいだには融合しがたいものがあった。(「古典物語」)
「爺さん酒飲んで酔払って転んだ」の次は、「婆さんそれ見てびっくりして死んじゃった」だそうです。
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『 ルールブリタニア』
ある晩、土星がルールブリタニアを歌いながら街角を曲ってきて、そこにあるバーへ入ろうとしたが、入口に環が閊えたので、環を外して表へ立てかけておいてから、彼は入って行った。
そのあとへ自動車がやってきて、ちょうどバーの内部から投げ飛ばされた酒壜を轢いて、パンクして、止った。
運転者は、彼の眼の前に立てかけてある手頃な環をタイアの代りに車輪に嵌めて、元のように行ってしまった。(「第三半球物語」)
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『 Over There』
久しぶりに秋晴れの波止場に立った私は、波に戯れている一羽のカモメを見て、ふと昔の事を呼び起した。折からけたたましい音を立てて頭上に迫ってきた一台の大型飛行艇が、今は西洋の港で立派な青年として活躍しているであろう西村君を確信させた。私の口笛には、おのずから米国出征軍がうたう壮快なラッパの音がはいった“Over There”が出てきた。(「紫色の35mmのきれっぱし」)
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『Youngman's Fancy』
それなら私自身はどうかと云えば……私のお父さんは何も友だちのようではないし、赤いネクタイをして、口笛で“Youngman'sFancy”を吹くわけでないし、ましてどこかの小父さんでなかったろうかという懸念などさらに挟めませんが、お祖父さんは、旅廻りの見世物師でした。(「北極光」)